2006年晩秋から発熱、下痢、吐き気、おう吐、腹痛などを主症状とするノロウイルスによる感染性胃腸炎が流行しています。ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生していますが、例年、冬場(11月上旬から3月)が流行シーズンとなります。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎及び食中毒の発生を防止するためには,ノロウイルスに関する正しい知識と予防対策等が必要です。
〔ノロウイルスによる感染性胃腸炎・食中毒〕
ノロウイルスは、ヒトだけに感染して(ヒト以外の細胞の中では増殖しない)、ヒトの小腸で増殖するウイルスです。ノロウイルスによる感染性胃腸炎および食中毒は、下記のような経路で、ウイルスが口から入ることにより感染します。
感染性胃腸炎の感染経路
● 患者のノロウイルスが 大量に含まれるふん便や おう吐物から人の手など を介しての二次感染。
● ノロウイルスが大量に 含まれるおう吐物が飛散 して周囲を広範囲に汚染 し、その後乾燥によって空気中に舞い上がったウイルスが口から入って感染。
● 家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところで、ヒトから ヒトへの飛沫感染等の直接感染
※ノロウイルスは感染力が強いため、家族に感染者
がいると家庭内でヒトからヒトへ感染します。
食中毒の感染経路
● ウイルスに汚染されていた二枚貝(特に生カキ)・ケーキ・サンドウィッチ ・サラダなど、生あるいは十分に加熱調理しないで摂取。
※カキを生で食べるのが冬場であることから、冬季の食中毒の原因ウイルスに なっていると考えられます。カキや二枚貝 を含まない食品を原因とする食 中毒も発生していますが、食品からウイルスを検出することが難しく、原因 食品を特定できなかった事例が過半数を占めています。
● 食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭 で調理を行う者など)が感染していて、その者を介して汚染した食品を摂取。
● ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取。
〔ノロウイルスに感染すると・・・〕
潜伏時間(感染してから発症するまでの時間)は24〜48時間で、発症すると吐き気・おう吐・下痢(一日数回からひどいときには10回以上)・腹痛、発熱などの症状が見られます。通常,これらの症状が1〜2日続いた後、治ります。後遺症もありません。また、感染しても発症しない場合や、軽い風邪のような症状の場合もあります。ただし,幼児や高齢者など体の抵抗力が弱い人が感染すると、おう吐物を誤嚥して窒息したり、脱水症状を起こすなど重症になることがあり、注意が必要です。
※患者のふん便やおう吐物には大量のウイルスが含まれています。下痢等の症 状がなくなっても、通常では1週間程度、長いときには1ヶ月程度ウイルス の排泄が続くことがあり、そのウイルスは感染源となりますので、食品を取 り扱う場合などには注意が必要です。
〔ノロウイルス発症した場合の治療法・・・〕
現在、このウイルスに効果のあるワクチンや抗ウイルス剤はありません。このため通常、整腸や吐き気を和らげるなどの症状に応じた治療(対症療法)が行われます。下痢やおう吐のため、脱水症状がひどい場合には病院で輸液などの治療が必要になることもあります。
下痢止めは、ウイルスを体内に留めてしまうことになり、病気の回復を遅らせることがあります。抗生物質も効果がありません。「体調がおかしいな?」と感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。ふん便の検査でノロウイルスを検出することができますので診断も可能です。
症状があるときは、体力を消耗しないように休養し、脱水にならないようできる限り水分(白湯で2〜3倍に薄めたイオン飲料やお茶など)の摂取と栄養(柔らかく煮込んだうどんやお粥、果実ぜりーやヨーグルトなどの口当たりのよいもの)の補給を心がけましょう。
〔ノロウイルスの感染予防〕
@ 基本は手洗いです。トイレの後、調理をする前、食事の前など日常的に確実な手洗いを習慣づけることが重要です。
A ふん便・おう吐物の処理を確実に行います。処理時は使い捨てのマスクや手袋・エプロンを着用して、直接触れてはいけません。おう吐物はビニール袋に入れ封をして処分します。処理中は換気に留意し、処理後は汚染範囲の消毒清掃を徹底します。処理後は手洗い・うがいを行います。
B ノロウイルスに対する有効な(感染力を失わせる)消毒方法は、熱湯による消毒(85℃以上で1分以上の加熱)、または薬品による消毒(0.02%次亜塩素酸ナトリウム溶液に10分以上の浸漬)です。アルコール消毒液はあまり効果がありません。患者のおう吐物で汚染されたおもちゃやシーツ、衣類なども消毒が必要になります。
Cノロウイルスに汚染された浴槽水が感染経路となることがあります。症状があるときは入浴を控えシャワーだけにしたり、入浴順序を最後にします。浴槽水は毎日換水し、浴槽も毎日清掃します。
D調理の際に気をつけること
● ノロウイルスは熱に弱いので、食材(特にカキ、アサリ、シジミ、ハマグリ等の二枚貝)を加熱する際は、中心部まで十分に加熱(85℃以上、1分以上)します。
● 加熱できないものは、流水でしっかり洗浄しましょう。
● 魚介類などを取り扱う調理器具(まな板、包丁など)と、生のまま食べる野菜などを取り扱う調理器具は別にします。調理後は調理台や調理器具を確実に洗浄、消毒しましょう。
次亜塩素酸ナトリウム 0.02%次亜塩素酸ナトリウム溶液は 原液の濃度が1%の場合には50倍に希釈、原液の濃度が5%の場合には250倍に希釈、原液の濃度が6%の場合には300倍に希釈、原液の濃度が12%の場合には600倍に希釈する。 |
以 上
<参考・引用>
国立感染症研究所感染症情報センター http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
ノロウイルスに関するQ&A http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html