骨粗しょう症とカルシウム骨
                  (投稿日 2006/11/18)

骨粗しょう症とは、骨の量が減少すると同時に、骨の内部の構造が粗く「す」が入ったようにスカスカになり、全身の骨が弱くなる病気です。わが国での骨粗しょう症の患者数は、現在約1070万人と言われ、女性8割、男性2割と圧倒的に女性が多いのが特徴です。40歳代から増え始め、以後年齢を負うごとに増えていき、65歳以上になると2人に1人、80歳以上では、10人に7人という割合になります。これは、骨がもろくなるのを「老化」と考え、予防や治療を行わずに放置する場合が非常に多いためとも言われています。骨粗しょう症を放置すると骨折の危険性が高まり、高齢者では骨折から寝たきりへとつながってしまうこともあります。ここでは、骨粗しょう症とカルシウムについて予防法も含めてご紹介いたします。

「骨」について
骨の働きは、内臓を守り、身体の構造を支える役割だけではなく、カルシウムを貯蔵する働きももっています。カルシウムは、人間の身体の細胞が機能するために欠かせないミネラルです。血液中には常に一定量が溶け込んでおり、カルシムが足りなくなると、骨のカルシウムを溶かして血液に補給します。溶けた骨には、食物から取り込まれたカルシウムが補充され、新しい骨が作られていきます。これを骨代謝といいます。
骨代謝には、「破骨細胞」や「骨芽細胞」という骨の細胞がかかわっています。破骨細胞は骨を溶かして破骨し(骨吸収)、骨芽細胞は破骨された骨の表面にカルシウムを定着させていく働きがあります(骨形成)。

骨粗しょう症の発症原因
健康なときは、骨吸収と骨形成のバランスが保たれていますが、なんらかの原因でそのバランスが崩れると、骨粗しょう症がおこります。そのバランスの崩れ方によって、骨粗しょう症は、二つのタイプに分かれます。
高回転型:骨吸収が更新する
        閉経後の女性に多くみられるタイプで、閉経後骨粗しょう症とよばれる
     ものです。女性ホルモンのエストロゲンには、骨芽細胞を増やし、破骨
     細胞をコントロールする働きがありますが、閉経でホルモンの分泌が急
     激に低下すると代謝が亢進して骨吸収が骨形成を上回り、結果的に骨量
     が減少します。

低回転型:骨形成が衰える
        老人性骨粗しょう症に多く見られるタイプで、加齢のために骨吸収、骨
     形成共に低下するが、骨形成の低下が骨吸収を上回るために骨量が低下
     する。


骨粗しょう症の診断について
骨粗しょう症の診断では、骨量(こつりょう:骨の量)の測定が行われます。現在、さまざまな骨量測定機器がありますが、いずれも痛みもなく比較的簡単に行うことができます。測定する場所は腰や大腿骨、手、かかとなどがあります。骨量測定では、自覚症状のない初期の骨粗しょう症を発見することが可能です。主に、整形外科、婦人科、内科(老年科・内分泌科)で診断・治療が行われます。
骨量測定の方法
DXA(デキサ法)2種類のX線を使った装置で、腰や大腿骨などさまざまな部位で
     測定できます。

超音波法:かかとの骨などに超音波を当てて測ります。X線でないため妊婦でも測
     定が安心です。

MD(エムディー法):手のひらのX線をとって測定します。
pQCT(ピーキューシーティー法):手首の骨などの断面をよみとりコンピューターで骨密
     度を計算します。


骨粗鬆症の予防について

図35

身体の中に入ってくるカルシウムより、出て行くカルシウムのほうが多ければ、当然骨のカルシウム量は減っていくことになります。すなわち、身体のカルシウム貯蔵庫である骨から、どんどんカルシウムが出て行くことになるのです。逆に、入ってくるカルシウムのほうが多ければ、骨を増やすことが期待できます。骨粗しょう症を予防するには、毎日の食生活の中で、カルシウム摂取量を増やして、身体の中のカルシウムの貯蓄量を増やすことが重要です。

その1:カルシウム摂取量
厚生労働省が毎年実施している国民栄養調査の結果によると、日本人の平均カルシウム摂取量は579mg/日(平成9年)で、厚生労働省の定める日本人の所要量(必要量)を成人600mg/日と低く設定しているにも関らず、充足率は90%台でカルシウム摂取量は依然不足しているのが現状です。
一方、アメリカ人の平均カルシウム摂取量は約800mg/日近くと日本と比較すると高い値となっています。米国科学アカデミー(NAS)のカルシウム推奨量も下記表1(女性のカルシウム所要量)のように日本の所要量よりはるかに高く設定されており、アメリカの国立衛生研究所(NIH)においても、予防医学的見地から思春期および更年期と老年期に高いカルシウム摂取量が提唱されているのです。
また、カルシウムの吸収率や排泄率は個人差がありますが、標準的な値は上の表〈計算上でのカルシウム・バランス〉のようになります。カルシウムの収支をプラスにするためには、1560mg以上のカルシウムを食物からとる必要があり、毎日25mgの「骨の貯蓄」をするためには、1日のカルシウム摂取量は800mgとなります。授乳期・妊娠期以外の年代において骨粗しょう症を予防するためのカルシウム摂取量は、「骨の貯蓄」のできる800mg/日を目指しましょう。

(表1)女性のカルシウム所要量           *は、ホルモン補充療法実施者

年齢

日本(厚労省)1994

アメリカ(NAS1997

アメリカ(NIH1994

68

500

800

8001,200

9

600

1,300

10

700

1118

1,2001500

1924

600

1,000

2550

1,000

51歳以上

1,200

1,500 *1,000

妊娠期

900

1,000

1,2001,500

授乳期

1,100

カルシウムの摂取量UPのためのポイント
では、どのようにして、カルシウム摂取量を増やせばいいのでしょうか?
それは、ちょっとした心がけで可能となります。例えば、牛乳を朝晩コップ1杯ずつ飲んだり(コップ1杯のカルシウム量231mgおかずにひじき(10gでカルシウム量140mgや凍り豆腐(1枚でカルシウム量132mgを一品つけたりと、ちょっとした工夫でカルシウムの摂取量を増やすことは可能です。牛乳で下痢をする人は、ヨーグルトや低脂肪乳、チーズで摂取してもOKです。
カルシウムは、一度にまとめて蓄えることができません。資料1の「カルシウムを多く含んでいる主な食品」をご参考に日々の食生活の中で上手に取り入れ、カルシウムの貯蓄量を増やしましょう。

その2:ビタミンDで吸収量をUP
ビタミンDには、カルシウムの吸収を促進し、骨の再生を促進する働きがあります。
食物にも含まれていますが、日光浴をすることによっても皮下で合成されます。皮膚の中にある「プロビタミン
D」が紫外線の作用でビタミンDになるのです。ビタミンDは肝臓・腎臓で「活性型ビタミンD」に変化して腸からのカルシウム吸収の手助けをしますので、肝臓・腎臓に障害があるとカルシウムの吸収が低下する原因になるのです。ビタミンD1日所要量は成人で100IU2.5μg)とされており、食物では主に魚介類に多く含まれています。

その3:定期的な運動を継続する
若いころ運動をしなかった人や、長い間病気で寝込みがちだった人は、体格がきゃしゃになり骨が弱く、骨折しやすいことが知られています。無重力の宇宙から帰ってきた宇宙飛行士の骨量が減っていたことも話題になりました。骨を丈夫にするためにはカルシウムをとることが必要ですが、それと同じくらい運動が大切になります。それは、運動で骨に力がかかると、骨に弱いマイナスの電気が発生しカルシウムを呼び寄せるからです。また、運動は骨の血液の流れをよくし、骨をつくる細胞の働きを活発にします。
エアロビクスよりはバレーボール、それよりは重量挙げというように、骨にかかる力が大きく、また繰り返しが多いほど骨を強くすることがわかっています。でも無理に激しい運動をする必要はありません。たとえばウォーキングや水泳は、骨にかかる力は大きくはありませんが、継続して行えば効果が期待できます。スポーツが苦手という方やこれから運動を始める方は、まず散歩から始めるとよいでしょう。無理のない自分にあった運動を継続しましょう。

一般的に子供の成長期や妊娠期、授乳期には、カルシウムの摂取量を意識しますが、それ以外では、カルシウムの重要性が忘れられる傾向にあります。この機会にカルシウムの重要性を見直して、将来に骨粗しょう症という「つけ」を残さないようにしましょう。

カルシウムを多く含んでいる主な食品

 

食品名

100g当たりの

カルシウム量

1回使用量

1回当たりの

カルシウム量

牛乳・乳製品

パルメザンチーズ

1300mg

大さじ1(6g)

78mg

チェダーチーズ

740mg

1切れ(20g)

148mg

プロセスチーズ

830mg

1切れ(20g)

166mg

スキムミルク

1100mg

大さじ2(12g)

132mg

低脂肪乳

130mg

1カップ(210g)

273mg

牛乳

110mg

1カップ(210g)

231mg

プレーンヨーグルト

120mg

1/2カップ(105g)

126mg

魚介類

干しえび

7100mg

大さじ1(8g)

568mg

煮干し

2200mg

10(15g)

330mg

桜海老(素干し)

2000mg

大さじ2(6g)

120mg

まいわし(丸干し)

440mg

2(30g)

132mg

ししゃも

360mg

2(40g)

144mg

大豆・大豆製品

凍り豆腐

660mg

1(20g)

132mg

がんもどき

270mg

1/2(50g)

135mg

木綿豆腐

120mg

1/3(100g)

120mg

絹ごし豆腐

43mg

1/3(100g)

43mg

おから

100mg

1/2カップ(50g)

50mg

野菜・海藻類

干しひじき

1400mg

大さじ2(10g)

140mg

小松菜

170mg

1/3(100g)

170mg

チンゲン菜

100mg

1株(100g

100mg

切り干し大根

540mg

1/3カップ(10g)

54mg

参考にした資料
日本放送出版協会:きょうの健康9月号  保健同人社:暮らしと健康10月号
Homepage:社団法人日本牛乳普及協会・財団法人骨粗鬆症財団・萬有製薬株式会社・武田薬品株式会社