夏の暑さへの対応


 もうすぐ暑い夏がやって来ます。熱中症を予防して、大いに夏をエンジョイしましょう。
 昨年の夏(6月〜8月)の平均気温は、統計開始(1898年)以来の最高を記録し、職場や家庭等で熱中症が多発しました。総務省消防庁の発表では、2010年夏期(7月〜9月)の全国における熱中症による救急搬送人員は53,843人で、このうち搬送後に死亡が確認されたのは167人に達しました。また、厚生労働省の発表では、職場における熱中症による死亡者は、近年10人程度から20人程度で推移してきましたが、2010年は33人(2010年9月1日時点 速報値)に増加しました。このように、熱中症は命にかかわるリスクの高いものと言えます。

1.どうして熱中症になるのか
 日本の夏は高温多湿です。高温多湿の環境下で作業をしたり、運動をしたりすると多量の汗をかきます。汗をかくことで体温を下げることができますが、汗には、水分と塩分が含まれていますので、汗をかくことは体の中から水分と塩分を外に出してしまうことになります。この状態を放置していると、熱中症になることがあります。 また、前日からの深酒や寝不足、慢性的な疲労、偏食、下痢等は、熱中症になるリスクを高めてしまいます。

2. 熱中症にはどのようなものがあるか
 高温多湿の環境下で起こるさまざまな体の障害を総称して熱中症といいます。医学的には、「一般的に高温環境下で発症し、体温維持のための生理的反応より生じた失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの連続的な病態」と解釈されています。
 熱中症は、熱波により主に高齢者に起こるもの、幼児が高温環境に放置されて起こるもの、高温環境での作業やスポーツで起こるもの等があります。熱中症は、その重傷度と症状から「熱射病」、「熱虚脱」、「熱けいれん痙攣」等に分類できます。
「熱射病」は、汗をかくことによる脱水、血液量の減少に続いて、皮膚の血管の収縮に伴って、体から発生した熱が放出することができず、脳にある体温調節中枢にまで障害が及んだものです。このような状態を放置すると死亡することがあります。発症者は、意識消失もしくは錯乱状態のことが多いので、周りの人は、発症者の異常な体温上昇(40℃以上)に気がついたら、すぐに体温を冷やすとともに救急車を呼ぶ必要があります。
「熱虚脱」は、熱を放出するために皮膚の血管が拡張し、それにより脳への血流が減少して、頭痛、めまい、失神等を起こすものです。発症者を涼しい場所に移し、意識があれば水分を補給します。意識がなければ膝の下に何かを敷いて足を上げ、脳への血流を増やしてあげます。
「熱痙攣」は、多量の汗をかいて、水のみを補給したため塩分不足になった時に起こりやすいとされ、四肢や腹筋などに痛みをともなった痙攣を起こします。発症者は、水分を補給し、涼しいところで安静にしていれば軽快するものとされています。

3. 熱中症を予防するために
◆今年の夏は、電力の供給不足によりエアコン等の使用が制限され、熱中症のリスクが高まる可能性があります。家庭やオフィスでは、次のこと等に注意しましょう。
・暑さをできるだけ避ける。
 具体的には、ブラインドやすだれを垂らす。日傘をさす。帽子をかぶる。扇風機やエアコンを使う等があります。
・こまめに水分を補給する。
 水分補給の基本的な考え方は、汗をかいた時に、体の外に出てしまった水分と近い成分を発汗量とほぼ同じ量だけ補うということです。
 生理食塩水(人の体液浸透圧と同じ)と水を飲み比べると、水の場合は飲んでから2時間以内に尿に排出されてしまいますが、生理食塩水の場合は飲んでから約5時間以上かけてゆっくり排出されます。つまり、人の浸透圧に近いものを飲むとそれだけ体内にとどまっている時間が長いため、熱中症予防の飲料として適しています。但し、生理食塩水はおいしくないため、これに糖分等を混ぜたスポーツドリンクが市販されています。
 水分を補給する時の頻度と量は、発汗量が多い場合には、20分ごとにコップ1杯程度が目安になります。 なお、どのような種類のお酒であっても、アルコールは尿の量を増やし、体内の水分を排泄してしまうため、水分をビール等で補給するのは誤りです。一旦吸収した水分も、それ以上の水分がその後に尿で失われてしまいます。
・急に暑くなる日は特に注意する。
 人が上手に発汗できるようになるには暑さでの慣れが必要です。暑い環境での運動や作業を始めてから3〜4日経つと、汗をかくための自律神経の反応が早くなって、人は体温上昇を防ぐのが上手になってきます。さらに、3〜4週間経つと、汗に無駄な塩分を出さないようにするホルモンが出てくるようになります。暑さには徐々に慣れるように工夫しましょう。
・風通しの良い、ゆったりとした服を着る。
 服装は、皮膚表面まで気流が届き、汗を吸って服の表面から蒸発させることができるものが理想です。近年開発されている吸汗・速乾素材や軽・涼スーツ等もあります。太陽光の下では、輻射熱を吸収して熱くなる黒色系の素材は避けましょう。
・高齢者は温度に対する感受性が低下し、暑さを自覚できにくくなる。屋内においても熱中症になることがあるので注意が必要。

4. お役立ち情報
@ 熱中症の予防について詳しく知るなら
 ・ 環境省ホームページ
    http://www.env.go.jp/chemi/heat_stroke/manual.html
 ・ (独)日本スポーツ振興センター
    http://naash.go.jp/anzen/anzen_school/anzenjouhou/taisaku/nettyuusyo/tabid/114/Default.aspx
A WBGTの予測値等の情報を得るなら
 ・ 環境省熱中症予防情報サイト
    http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/

以上

<参考・引用>
1.総務省消防庁ホームページ
   http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/2210/221029_2houdou/01_houdoushiryou.pdf
2.厚生労働省ホームページ
   http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000qako-img/2r9852000000qarc.pdf
3.環境省ホームページ
   http://www.env.go.jp/chemi/heat_stroke/manual.html